FACULTY OF SCIENCE AND ENGINEERING, GRADUATE SCHOOL OF ENGINEERING, IWATE UNIVERSITY
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先進研究

あくなき探究心こそが先進研究の原動力。新たな課題への挑戦が知の創造を可能にしています

複合極限環境(極低温・強磁場・高圧力)を実験室で人工的に作り、物質の本質的な特性、新規量子現象を探索する中西研究室の学生達。極限環境下では固体中に存在する電子の新しい集団状態が作り出されます。

複合極限環境(極低温・強磁場・高圧力)を実験室で人工的に作り、物質の本質的な特性、新規量子現象を探索する中西研究室の学生達。極限環境下では固体中に存在する電子の新しい集団状態が作り出されます。

 地域の未来を創り、地球規模の課題にも挑戦し続ける岩手大学。理工学部の理学と工学の融合から生まれる先進の研究成果は、新しい知の創造へとつづく道をひらく大きな力となっています。その原動力となっているのが、本学に学ぶ学生や優れた教育研究を実践する研究者たちのあくなき探究心です。日々の研鑽の中で行われる新たな研究課題への挑戦が、本学独自の知の創造を可能にしています。

 

1.「極限環境下で物質が見せる新規電子物性現象の探索とその解明」
物質中の電子状態を明らかにする研究から特殊機能材料の設計へ

床下約2mの深さに掘られたピット内部に設置されている希釈冷凍機。この装置を用いることで、絶対零度に限りなく近い〜10 mK(絶対零度から100分の1℃の温度)の極低温の世界を作ることが出来ます。

床下約2mの深さに掘られたピット内部に設置されている希釈冷凍機。この装置を用いることで、絶対零度に限りなく近い〜10 mK(絶対零度から100分の1℃の温度)の極低温の世界を作ることが出来ます。

 皆さんは、世の中の物質の特性(個性)がそれを構成する原子・分子により決定づけられていることを御存知ですか?特に、素粒子の一つ「電子」が物質の特性を特徴づける際、極めて重要な役割を果たすことを御存知でしょうか?物質の特性(物性)は物質中の電子の状態で決定づけられます。電子機器をはじめ我々の生活に欠かせない電子。しかし、我々が生活している環境で電子はその本性を殆ど見せてくれません。本性はおろか、電子が長く存在出来る環境は、人間社会のほんの一部である「真空中」と「固体中(物質中)」のみです。しかも人間が生活出来ない極限環境でのみ、電子はその本性を私達に見せてくれます。そうした特殊環境を実験室で人工的に作り上げ、電子が集団として見せる量子現象(超伝導、磁性、重い電子系、量子臨界性)を観測し、その観測データから新しい法則、新しい物理学の構築に挑戦しています。新しい物性現象の発見と解明は、これまでにない特徴(物性)を有した特殊機能材料の設計にも繋がります。

物理・材料理工学科 数理・物理コース 中西 良樹(なかにし よしき) 准教授

物理・材料理工学科
数理・物理コース
中西 良樹(なかにし よしき) 准教授

理学の研究(使命)は主にここまで。その次は、この成果を応用・開発する工学の研究へとリレーされます。

 最近の研究成果としては、希土類元素(Eu)を含む物質で、液体ヘリウム温度(4. 2 K:マイナス269℃)まで冷やすことにより、金属が“プラスティック”あるいは“豆腐”の様に軟らかくなる現象を発見したことです。人間の社会では味わえない「非日常現象」が、極低温をはじめとする極限環境下では頻繁に体験出来ます。「好奇心の限界」を私達と超えてみませんか?

 

2.社会のニーズに応えるワイヤレスコミュニケーション研究
空間信号処理技術、電磁界解析技術、アンテナの開発の3つの基盤技術を活かし
人に優しい社会の実現をめざしています

電波を使って、ヒトの位置や状態を調べる実験を行っています。

電波を使って、ヒトの位置や状態を調べる実験を行っています。

 複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを使う「MIMO(マイモ)」(Multiple – Input Multiple – Output)という技術があります。今まで電波の利用効率を上げる(スピードを上げる)には電波の周波数(帯域)をたくさん使うしかありませんでした。たくさん使い続けるといつか枯渇してしまいます。そこで、少ない帯域でも情報を高速に伝送することができる技術として開発されたのがMIMOという技術です。
 MIMO技術では、各アンテナの電波が干渉してしまうという問題があります。また、一旦電波の飛び方を調べたとしても、人が動いたりするだけで電波の届き方が変わってしまいます。近くを人が歩いたりするだけで電波の飛び方が変化するのです。

システム創成工学科 電気電子通信コース 本間 尚樹(ほんま なおき) 准教授

システム創成工学科 電気電子通信コース
本間 尚樹(ほんま なおき) 准教授

私たちは、その現象を応用することを考えました。言わば逆転の発想から生まれたのが、MIMOで感度を高めたマイクロ波生体センサーです。

 また、マイクロ波を使って人間の心拍を計る研究も進めています。これは見守りセンサといえるもので、お年寄りの心臓に異常が起きた際に警報を鳴らすなど、一人暮らしの老人ケアに活用することが期待されています。
 私たちは、空間信号処理技術、電磁界解析技術、アンテナの開発という3つの基盤技術を活かして、社会のニーズに応える人に優しいワイヤレスコミュニケーションの世界を実現したいと考えています。

 

3.「視覚機能を取り戻す」治療法の開発
目で見る感動をもう一度味わってほしい、研究が進む視覚回復のための遺伝子治療

網膜には、光を受け取る細胞、情報を解析する細胞、電気信号に変える細胞(神経節細胞)があり、最終的に電気信号として視神経を通って脳に情報が送られます。

網膜には、光を受け取る細胞、情報を解析する細胞、電気信号に変える細胞(神経節細胞)があり、最終的に電気信号として視神経を通って脳に情報が送られます。

 一般に、外界の情報を得る手段として、8割以上は視覚に依存していると言われています。現状では、いったん失明すると再び視覚機能を取り戻す治療法はありません。
 外からの映像情報は、眼球の表面である角膜、そしてレンズで焦点を調節し、網膜に投影されます。網膜には、外から入ってきた光を受け取る細胞、光の情報を解析する細胞、電気信号に変える細胞(神経節細胞)などがあり、最終的に電気信号として視神経を通って脳に情報が送られ、映像が作られます。これら網膜の細胞のうち、光を受け取る細胞だけが消失し、失明に至る病気があり、中途失明原因の上位の疾患となっています。残っている細胞に光を受け取る能力を付け加えれば、視覚を回復できると考えられるのです。

化学・生命理工学科 生命コース 冨田 浩史(とみた ひろし) 教授

化学・生命理工学科 生命コース
冨田 浩史(とみた ひろし) 教授

 注目したのは緑藻類のクラミドモナスのもつ特殊な光受容タンパク質です。1つのタンパク質で、光を受け取る能力と、光を受け取ると細胞内に陽イオンを透過させる機能があります。「細胞内に陽イオンを透過させる」という機能が重要なのです。
 クラミドモナスのもつタンパク質を網膜の神経節細胞に導入すると、光を受けると電気信号を作り出す細胞に変えることができます。神経節細胞は、自身で光を受け取り脳へ光情報を伝達できるようになります。
 ウイルスを利用したラットへの導入実験では、視覚が回復していることが判明しました。さまざまな課題をクリアしながら近い将来、私たちが開発した合成遺伝子を目に注射するだけで、視覚が回復するという、夢のような治療法に発展する可能性があります。

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