視覚再建のための遺伝子治療研究 ~色覚再生に向けて新たな展開!!
2017.02.22
岩手大学理工学部生命コースの佐藤雅俊修士課程大学院生(2年)、菅野江里子准教授、冨田浩史教授らは、波長感受域の異なる2つの光受容タンパク質を網膜に導入し、失明したラットの視覚感受性を高めることに成功しました。ChR2*1(青色のみに感受性を持つ)遺伝子を用いた遺伝子治療の臨床試験が網膜色素変性症*2患者を対象に米国で始まっていますが、感受波長が青色
に限定されるため、視覚が回復したとしても青色しか見ることができません。2014年、我々は全ての色に応答する遺伝子
(mVChR1*3)を開発し、遺伝子導入によって失明に至ったラットが全ての色を感知できるようになることを報告しています。今回、ChR2を持つラットにmVChR1遺伝子を導入し、2つの遺伝子を持つラットの視覚機能を調べ、mVChR1遺伝子を追加導入する
ことで感受性を高められることを実証しました。これらの結果は、複合的に遺伝子導入を行い、機能を順次高めていくことが可能
であることを示しており、将来的には色覚を作り上げることも可能であることを示しています。この研究成果は、本年1月23日に英国ネイチャー出版グループの「Scientific
Reports」電子版に掲載されました。
[掲載論文]
題目: Visual Responses of Photoreceptor Degenerated Rats Expressing Two Different
Types of Channel Rhodopsin Genes.
著者: Masatoshi Sato, Eriko Sugano, Kitako Tabata, Kei Sannohe, Yoshito Watanabe, Taku
Ozaki, Makoto Tamai, Hiroshi Tomita.
誌名: ScientificReports
公表日: 平成29年1月23日午前10時(英国時間)
[用語解説]
*1 ChR2: 緑藻類クラミドモナスより見出された光受容タンパク質
*2 網膜色素変性症:網膜にある光を受け取る細胞(視細胞)が障害され、重度の視力低下を引き起こす疾患
*3 mVChR1: 緑藻類ボルボックスより見出された光受容タンパク質の改変体。日米欧で特許取得済み
【本件に関するお問い合わせ】
岩手大学理工学部生命コース教授 冨田 浩史(とみた ひろし)
電 話:019-621-6427
メール:htomita@iwate-u.ac.jp