社会基盤・環境コース

「安全・安心な社会の構築」と「人と環境に優しい持続可能な社会の創出」を担う技術者・研究者の育成を目指す

どのようなことを学び研究するコース?

自然災害が多発する我が国では、災害に強いハードウェア(構造物)と人や地域・環境に配慮したソフトウェア(防災教育、環境意識)の両側面を持つ総合的な防災・減災対策が求められています。一方、地方には少子高齢化による過疎化の進行、都市機能の拡散など急激な社会構造の変化が生じており、地域や環境に合わせた社会基盤整備の在り方が問われています。未曾有の東日本大震災を経験した今、社会基盤・環境コースでは、建設・環境・防災の3つの柱からなる教育研究を展開し、「安全・安心な社会の構築」と「人と環境に優しい持続可能な社会の創出」を担う技術者・研究者の育成をめざします。

環境工学分野

大気・水・土壌などの環境問題が顕在化し、環境負荷が大きくなっています。また、人と自然とが共生する循環型社会を構築するための課題は山積みです。環境工学分野では、環境工学、資源循環工学などさまざまな環境工学に関する学問を学びます。

建設工学分野

災害に強いハード対策を行うには、耐久性を考慮した構造・材料を適用し、長期にわたる診断・補修補強・維持管理が不可欠です。建設工学分野では、構造力学、建設材料学、施設維持管理工学などさまざまな建設工学に関する学問を学びます。

防災工学分野

東日本大震災からの復興と地域の持続的発展に向け、防災・まちづくりの知識を高めることは重要です。防災工学分野では、都市計画学、水・土砂防災工学、地域創生課題演習などさまざまな防災工学に関する学問を学びます。

この研究は社会にどのように生かされる?

環境工学分野

私たちの健康と環境を守るために様々な研究が進められています。例えば採石場作業者の健康管理のため、現場の粉塵量を迅速にかつ簡易的な方法で測定する技術を開発しています。廃棄物の再利用も重要な課題です。有機化学物質に汚染された土壌の浄化に使用する化学薬品の代替として、ワインを製造する際に出るブドウの搾りかすを利用する方法を開発しています。また、生活排水(下水)中に含まれるリンやカリウム、マグネシウムを回収し肥料として再利用する技術開発が進められています。環境工学分野の研究は人の健康と豊かな自然を守る持続可能な循環型社会の形成に生かされています。

建設工学分野

道路や橋、また津波や洪水から町を守る防潮堤や堤防などの土木構造物は建設工学分野の技術で建設されています。現在、廃棄物を建設材料のリサイクル資材として利用する技術開発や、より安全な構造物を建設するための土台となる地盤や岩盤の物理学的特性を明らかにする研究が進められています。また、建設構造物は老朽化します。長い年月によってコンクリートが劣化して崩れ、橋の塗装が剥がれ、橋を支える鉄筋が腐食すると、橋の強度が維持できず安全に通行できません。私たちの安全な生活を守るためには、構造物がどの程度老朽化しているのか正しく「診断」し、適切な時期に「修復」または「作り直す」必要があります。建設分野の研究では簡易な装置を使って簡単に、そして正確に老朽化診断ができる方法を開発しています。建設工学分野の研究は私たちのより安全な社会基盤の構築に生かされています。

防災工学分野

発生する自然災害は地域ごとに異なります。防災工学分野の研究は、地域ごとに異なる自然災害に対し、よりよい防災・減災対策に生かされています。例えば津波が予想される沿岸地域では、シミュレーション研究により津波の高さ、浸水範囲、地震から津波が到達するまでの時間を予測します。ハードウェア研究の成果は津波を防ぐためのより強靭な防潮堤の建設に役立っています。さらにソフトウェア研究では、作成した防災教育の教材を小中学校で利用し正しい防災知識と意識を広め、また各地域で避難経路や避難行動を調査、解析し、地域住民と一緒に実際に避難訓練をすることで、その地域の防災・減災を進めることができ、災害に強いまちづくりを実現できます。

このコースに入学する学生に求めることは?

社会基盤・環境コースでは、安全・安心な社会基盤の整備をはじめ、既設構造物の長寿命化、環境問題の克服、循環型社会の実現を目指し、建設工学・環境工学・防災工学を専門分野とした教育研究を展開し、これらの専門分野に精通した建設技術者を育成します。そのために、本コースでは次のような能力・資質を備えた入学者を求めています。

  • 社会基盤・環境コースの専門科目を学ぶに相応しい基礎学力
  • 持続可能な社会の実現のための豊かな発想力と論理的な思考力
  • 自然と調和し、安全・安心な社会の構築のために、社会基盤・環境工学に関する様々な課題を積極的に探求し、解決しようとする意欲
  • 地域はもとよりグローバルに活躍したいという意欲及びコミュニケーション能力

どのような人材育成を目指している?

社会基盤・環境コースでは3つの専門分野である建設工学・防災工学・環境工学それぞれについて学びます。具体的には、建設工学では私たちの生活に欠かせない道路、橋、トンネルなどの建設構造物の設計や建設技術など、防災工学では様々な災害がなぜ起こるのか、そのメカニズムや防災・減災の手法など、環境工学ではなぜ環境汚染が起きるのか、その汚染防止技術と汚染浄化技術など、3つの分野の専門知識を持つ人材を育成します。また、科学技術英語などの外国語教育により技術者としてグローバルに活躍できる人材を育成します。さらに演習や実習科目の学びにより、建設構造物の維持管理や防災・減災対策、環境浄化に関する様々な課題を発見し、その課題について自ら解決方法を考え、その意見をグループで議論し解決方法をまとめ上げることで、課題解決能力や関係者とのコミュニケーション能力、チームワーク力を兼ね備えた人材を育成します。

卒業後の想定される進路は?

水、ガス、電気、通信ならびに道路、鉄道、空港、港などの交通ネットワークであるインフラストラクチャーは、社会生活そのものを支える社会基盤です。安心・安全かつ豊かに社会生活を営むために不可欠な社会基盤を、環境に配慮しながら計画・設計・建設・維持管理できる人材が必要とされています。今後も関連するさまざまな分野での活躍が期待されます。

  • 総合建設業
  • 建設・環境コンサルタント
  • インフラ関連
  • 運輸関連
  • 技術系上級公務員
  • 大学院進学 など

カリキュラム

1年次 2年次 3年次 4年次
専門基礎科目 基礎数学
微分積分学I
微分積分学Ⅱ
線形代数学
物理学I
物理学Ⅱ
化学Ⅰ
化学Ⅱ
微分方程式
物理学実験
化学実験
ベクトル解析
確率統計学
地学
フーリエ解析
社会基盤・環境コース
専門科目
地域創生課題演習Ⅰ
入門地域創生論
測量学実習Ⅰ
測量学実習Ⅱ
構造力学Ⅱ
コンクリート工学
鉄筋コンクリート工学
水理学Ⅰ
水理学Ⅱ
土質力学Ⅰ
土質力学Ⅱ
都市計画学
交通計画学
上下水道工学
地域創生課題演習Ⅱ
社会基盤・環境工学実験
社会基盤・環境プログラミング演習
科学技術英語Ⅰ
構造力学演習
設計製図
施工法
地域創生課題演習Ⅲ
数値計算法
鋼構造学
建設材料学
施設維持管理工学
水理学演習
水工学
土質力学演習
地質工学
地盤工学
耐震工学
地震・火山防災工学
水・土砂防災工学
公共政策学
水環境工学
大気環境工学
地盤環境工学
生態環境保全学
資源循環工学
特別演習
科学技術英語Ⅱ
卒業研究
学科内共通科目 測量学
電気回路論Ⅰ
電気理論の基礎
情報工学基礎
構造力学Ⅰ
環境工学
アナログ電子回路
離散数学
論理回路
材料力学Ⅰ
機械力学
機械設計学
学部内共通科目 ソフトパス理工学概論 技術者倫理
原子力工学
工業経営管理論
知的財産権概論
特許法特講
社会体験学習
国際研修

必修科目 選択科目

学生Interview

岩手の防災、よりよいまちづくりに貢献したい

本間 圭織さん

[岩手県 盛岡第四高校出身]

私は高校時代、東日本大震災における復興まちづくりや防災・減災について学びたいと考えていました。岩手大学では、建設学にあわせて防災学も学べるということで選びました。現在の大学生活では、建設の基礎知識や、公害や汚染などを扱う環境工学を学んだり、ハードのみならずソフト対策も意識した防災について考えたりする授業を通して、土木や建設分野の幅広い知識を得ています。研究室にはまだ所属していませんが、防災やまちづくり関連の研究室に入りたいと考えていて、将来は大学で学んだ専門的な知識や技術を生かしてより安全なまちづくりに生かしていきたいと思っています。

大学では興味がある分野を専門的に詳しく学べますし、アルバイトやサークル活動などの活動もできるので、自由なライフスタイルを送ることができます。興味があることには挑戦し、考えるだけでなく、行動に移していくことも大切だと感じています。

※取材は2022年12月段階のものです

このコースではこんな教員が待っています

システム創成工学科