材料科学コース

材料科学の観点から地球規模の課題を考え、未来社会を切り開く人材を育成

どのようなことを学び研究するコース?

主に材料科学のより高度な専門的知識について学習します。最先端の超伝導材料、電子材料、半導体材料、有機材料、リサイクル、水素活用材料などがそれに含まれます。さらに関連する分野のより広い課題、例えばエネルギーや資源問題、環境問題などについての知識を得るだけではなく、材料科学の視点からそれらの課題に対処する手法などについて学びます。また、研究成果を発表する能力、研究に限らない様々な課題解決能力などを高めるためのカリキュラムも用意しています。

この研究は社会にどのように生かされる?

材料科学コースで行われている研究は、新しい素材やプロセスなどの開発を可能にするというものです。それらを利用すると、省エネルギーや再生可能エネルギー、省資源やリサイクルに関係する技術などがより一層発展し、持続可能な社会の実現に大きく寄与することが期待されます。さらに、これらはこれまでに無い新たなデバイス・製品の開発に結びつくような研究でもあり、より快適で豊な暮らしの実現にも大いに役立てることが期待されます。

大学院に進学する学生に求めることは?

材料科学コースでは、材料科学技術分野において、広範な専門基礎学力と未知の課題を積極的に解決できる専門的応用能力を持ち、地域社会と国際社会の発展および自然環境との共生を重視する高度な専門技術者・研究者を育成することを目標にしています。このような観点から、本コースでは次のような資質・能力・意欲を持つ人を大学院生として求めます。

  • 研究・開発能力を培うに必要な数学、語学などの基礎科目と、材料科学あるいはその周辺分野での専門科目における十分な基礎学力を有する学生
  • 材料科学における学術探求を通じて社会の諸問題の解決に積極的に取り組む意欲を有し、実行力を持つ学生
  • 高い倫理観と、他者と協力して取り組むための協調性・柔軟性を持ち、さらに材料科学を含む各分野のリーダーとなることを目指す学生

どのような人材育成を目指している?

まずは材料科学を深く学び、高度な専門知識と技術を修得するとともに、多面的な視点から問題の本質を見抜く能力、柔軟な思考力と論理的な展開能力を身につけること。さらに、材料科学の専門性を生かして地域・グローバル社会の諸課題の解決に取り組み、社会貢献できる人材の育成を目指しています。また、広範な教養を備え、広い視野での俯瞰力と高い倫理観を持ち、科学技術が社会や地球環境に与える影響を多面的、客観的に分析すること。現代社会が直面する複雑な地球的課題に取り組む意欲と能力を持つ人材の育成も目指しています。

修了後の想定される進路は?

履修した材料科学を生かして、素材や半導体産業、機械・電気・電子に関係する部品や機器製造、自動車、リサイクル・エネルギー関連産業への進路が考えられます。また旧専攻では、大学院で培った研究能力を生かし、幅広い分野の産業界や公務員、高校教員などへの進路も実績があり、今後もそのような進路に進むことが想定されます。さらに産業界に限らず、大学や国公立研究所・試験所などの研究者となる道も開かれています。

学生Interview

プロセスエンジニアとして、半導体の技術革新に貢献したい

齊藤 圭紀さん

マテリアルコースでは学部3年時の冬に研究室に仮配属されます。配属されてすぐは就職も考えていたのですが、研究室のゼミに参加して先輩の研究報告を聞いていく中で私自身も研究開発に触れてみたいと考えるようになり、指導教官の吉本則之先生に相談をして大学院進学を決断しました。私は自分でつくった資料を人前で発表することが非常に苦手でしたが、大学院では学内や学外で発表する機会が多いと聞いていたのでとても不安でした。しかし、先輩や指導教官が何度も丁寧に指導してくださったり、ゼミのような少人数で発表する機会がたくさんあったりしたことで徐々に自信がつき、克服することができました。

学部では材料について広く学びました。さまざまな金属材料の特性や加工方法、半導体となる材料やその動作原理を勉強しました。また、トランジスタとなる有機薄膜を作製したり鋳型を作って鋳造したりとものづくりの体験をすることもできました。現在は有機材料の単結晶育成について研究しています。有機トランジスタや有機ELなどに応用されている有機材料の性能向上のために、固体中の分子がほぼ完全な周期性を持って配列している有機単結晶が求められています。単結晶の作製法は過飽和溶液から徐々に結晶化させる「溶液法」が主流ですが、適切な溶媒の選定が難しく、育成に時間もかかるなどの課題があります。そこで、融液から直接単結晶を育成する手法であるチョクラルスキー法に着目し、有機材料用単結晶育成装置の開発と有機単結晶の育成・評価を行っています。研究はうまくいかないことのほうが多いですが、その過程で装置を扱えるようになったり、知識が深まったりと自分の力になっていくので、そこがすごく楽しいです。

大学院は授業もありますが、自分が担当するテーマの研究活動がメインなので、自ら考えて行動することが増えました。また、装置を一から設計してつくり上げ、単結晶育成の実験に成功したときの感動は今でも忘れられません。もし院進を選択しなかった場合は1年間しか研究できないため、このような経験はできなかったと思います。

装置使用時の条件を最適化する過程に面白さとやりがいを感じているので、今後は研究を通して仕様を満たす装置をつくり上げ、半導体製造装置の技術革新に関わりたいと考えています。そういった思いもあり、半導体製造装置メーカーに行くことを決めました。入社後は、プロセスエンジニアとして次世代材料や構造に最適な条件の検討や、新規プロセスの開発に携わり、半導体の技術進化に貢献することで豊かな社会を支えたいと考えています。


※取材は2022年12月段階のものです

理工学専攻(修士課程)