生命科学コース

生命科学の理学的および工学的側面の融合から、健康に関わる問題の解決へ

どのようなことを学び研究するコース?

味を感じる仕組み、細胞の中でタンパク質が輸送される仕組み、脳が形作られる仕組み、神経回路網のコンピューターシミュレーションといった基礎分野から、視覚障害の遺伝子治療、オプトジェネティクス、無限細胞分裂技術やiPS細胞技術を用いた種の保全、生殖細胞の保存技術、ゲノム編集、医薬品開発といった応用分野までの幅広い研究を行っています。

この研究は社会にどのように生かされる?

基礎分野の研究は必ずしもすぐに役立つようには見えませんが、長い年月をかけて思わぬ革新的な応用分野の出現に発展することがあります(例えば、2008年にノーベル賞を受賞した下村博士のGFPの研究において、GFPが発見されたのは1960年代です)。遺伝子治療や医薬品開発は、人の健康に貢献することができます。また、種の保全に関わる研究は、生態系の維持につながります。

大学院に進学する学生に求めることは?

まず、生命科学に興味があること、次に自分で能動的にものを考えることができること、そして粘り強く物事に取り組むことです。生命科学は、異分野からの参入も多い分野なので、志望する研究室によっては、大学で必ずしも生命科学を専門に学んでいなくても大丈夫です。むしろ、幅広い学問的なバックグラウンドを持っていることが研究する上で、思わぬ役に立つこともあります。志望する研究室を決める際には、どういう研究を行い、これまでどのような成果を上げているかなど、情報収集に努めましょう。

どのような人材育成を目指している?

生命科学の知識と技術を身につけ、論理的に思考でき、周囲の人々との関係を築きつつ、能動的に物事(問題の発見、調査、解決策の考案など)に粘り強く取り組みめる人材の育成を目指します。また、生命科学は理系の学問分野の中で最もグローバル化が進んでいる分野であるので、必然的にグローバルな人材育成も行うことになります。

修了後の想定される進路は?

製薬会社(研究、開発、製造管理からMRまで)、医療・研究機器メーカー、医療関連IT企業、食料品メーカー、環境関連事業所、などの就職先が想定さ れます。また、博士課程に進学し、大学や高専の研究教育職、公的な研究所あるいは民間の研究職を目指す道もあります。

コースとして実施している学生サポートは?

大学院生になると、学部の学生実験のサポートを行うティーチングアシスタントなどのアルバイトがあります。また博士課程に進学する場合、修士までに学術論文を刊行していれば、日本学術振興会の特別研究員となり、給与(月額20万円)をもらえるチャンスがあります。

このコースのここがすごい!

本コースでは、臨床医学や薬学に近い研究を行っている研究室もあり、また異分野の研究室や企業との学際的な研究も盛んです。数年にわたる長期の海外での研究経験のある教員も多く、グローバルに羽ばたきたい学生の後押しをするもできます。

学生Interview

実験、研究では周囲との連携・共有が大切

木村 悠さん

私が大学院に進んだいちばん大きな理由は、4年間を振り返ったときに自分の知識の無さ、無力さに気付き、大学院の2年間でさらに自分を磨いて、知識やできることを増やしたかったからです。3年生から研究室に卒研配属され研究をしてきましたが、そこからの2年間はあっという間で、少し物足りないような気がしていたため、あと2年間修士課程で、自分の研究で実績を残して卒業したいという思いがあり大学院に進学することを決めました。大学院に進んでからは、学部時代以上に自分の成長を感じられる日々を送っていますし、自分の研究に対してより理解が深まり、熱意をもって研究に臨むことができています。

進学にあたって、「2年間、熱量をもって研究に打ち込めるのか」と不安になったときもありましたが、同期が頑張って実験している様子を見たり、先輩と話したりするうちに自然と不安はなくなり、現在は充実した時間を過ごしています。

学部時代は生物学、特に私たちの生命にかかわる遺伝学や神経細胞などに関し高校内容よりもっと詳しい内容を学んでいました。生命科学だけではなく、学部1年生のころは化学、数学の微分積分、物理学等を学ぶ機会もあり、さまざまな知識を身につけました。また、専門の授業だけではなく、自分の興味のある方言、法律、美術、心理学などの授業など、全く異なる分野も学びました。3年生から研究室に卒研配属され、私は眼の遺伝子治療についての研究を行っています。具体的には、光を受け取る視細胞の変性によって失明してしまう病気に対して光受容タンパク質の導入による治療法の確立に向けて日々研究に励み、大学院でも引き続き研究を続けています。

現在、網膜色素変性症(RP)や加齢黄斑変性症による視細胞の保護、視機能の維持を目的とする治療法は未だ存在せず、治療法の開発が望まれています。近年、オプトジェネティクス技術による視覚再生の遺伝子治療が期待されています。オプトジェネティクスで用いられるチャネルロドプシンは光を受け取ることで細胞内にイオンを透過し、神経活動を効率的に興奮・抑制することが知られています。私は、網膜色素上皮細胞およびRPモデル動物の視細胞に新規アニオンチャネルロドプシンを導入することによる視細胞保護効果を検討しております。特に当研究室で開発をしたチャネルロドプシン遺伝子を網膜の細胞に発現させ、細胞毒性評価を行い、また網膜組織を染色し網膜の細胞の形態学的特徴を検証しています。

研究以外にも、私は、教職の免許を取得するために大学4年間をかけて、専門の授業以外の授業を履修したり、教育実習に行ったりしました。現在は、大学院でしか取得できない専修免許の取得に向けて日々励んでいます。他の人よりも多く授業をとらなければならなかったりして時間に余裕がない時もありますが、今しかできない学びができていると実感でき、また専門分野以外の学びをすることで様々な発見があります。

さらに学部4年間では部活動にも力を入れて励んできました。私は、ラクロス部に所属し、朝六時からの練習を行っていました。一年生時に行われた新人大会では東北地区で優勝し全国大会に出場も致しました。現在は、大学院に通いながらコーチとして後輩の育成に力を入れております。大学の勉強や研究活動はもちろん大切ですが、目標をもって仲間と全力を尽くしたり、沢山の思い出を作り自分の感性を磨いたりすることは大学生として大切なことだと思います。社会に出てからは経験できないような思い出を作るために、大学ではいろんなことに挑戦してきました。様々なことに手を出しすぎて、時間の使い方が難しい時もありましたが、今となっては全ていい経験です。

将来、研究内容を生かせる職業につくことができたらうれしいですが、他の分野に進んでも、研究を行う上で学んだ手法やアプローチなどは生かしていきたいと思います。また、研究室では多くの学生さんや研究員のかたと共同で実験しているため、自分の勝手な行動や考えだけではいけない場面もたくさんあります。みんなが快適に生活するために、周りに気を使う力も研究室では身につけることができたと思っているので、就職後も役立てていきたいと思います。


※取材は2022年12月段階のものです

理工学専攻(修士課程)