数理・物理コース
専門的能力と応用展開力を兼ね備えたグローバルな人材を育成
どのようなことを学び研究するコース?
数理・物理コースには「数理科学」、「物理科学」、「先進物性」の3つの分野があります。「数理科学」では、整数論、リー代数、偏微分方程式、微分トポロジー、数値計算、関数解析、確率統計モデルを学びます。「物理科学」では、高エネルギー物理、原子核ハドロン物理、森羅万象の物理、宇宙物理を学びます。「先進物性」では、物性理論、物性実験(超伝導、強相関電子物理、量子物性物理、高圧物性物理、極限計測、圧力制御結晶成長)といった理学的要素を学ぶことができます。
この研究は社会にどのように生かされる?
持続可能な社会実現に向けて、科学技術分野におけるイノベーションの創出、発展に貢献することができます。また、エネルギー、資源および環境問題など、地球規模で取り組む課題を解決できると期待されます。
大学院に進学する学生に求めることは?
自然現象、物性現象の実験的、理論的解明に大いなる興味を持つこと。また、物事を一から考え、自分の頭で深く考えることに積極的であること。そして、コミュニケーション力と社会的倫理感を持ち、地域社会・国際社会へ貢献したいというモチベーションの高い学生を求めています。
どのような人材育成を目指している?
数学は理工学のあらゆる分野の基礎になります。そのため、数理的基礎知識の習得を経て、理論、計算機を使ったシミュレーションなどを使える状態にまで成熟させることを目指しています。さらに、解法が未知な問題の解決に挑戦できる人材の育成を目指しています。物理では、物理学、数学の基礎的な知識と自然科学的な物の見方、考え方を身につけ、論理的かつ柔軟な思考力と課題解決力を備えた人材を育成します。また、好奇心を大切にし、小さなことにも疑問を持ち、自身で考え、新しい発見を引き出せるような思考力、判断力、想像力を持った人材育成を目指しています。さらに、プレゼンテーション、コミュニケーション、コーディネートなどの能力を身につけ、科学的視野の広いグローバル時代に活躍できる人材の育成を目指しています。
修了後の想定される進路は?
本質を追究する数理・物理的な思考力およびセンスは、多様化、複雑化する現代社会において問題解決能力として必要不可欠であり、研究・開発者として社会の幅広い分野で活躍できます。大学院への進学も多く期待され、専門分野をさらに詳しく学ぶことができます。具体的には、大学・高校、国立研究所など研究・教育機関、電気エレクトロニクス関連、金属素材関連、ソフトエンジニア関連、金融関連、情報サービス関連、県庁・市役所など官公庁、公務員、大学院進学などの進路が想定されます。
コースとして実施している学生サポートは?
大学院に進学すると、ティーチングアシスタント制度があり、学部生の教育アシスタントを経験することで謝金をもらうシステムがあります。数理・物理コースはできたばかりのコースです。就職に関しては未知の部分も多いのですが、早くも各企業から就職に関する問い合わせがあり、社会からのニーズがあるという手応えを感じています。
このコースのここがすごい!
本コースで開講する理工学分野の講義(超伝導理工学特論、ナノ材料理工学特論、計算材料学特論、応用数理学特論、応用確率統計学特論)や、他コース開講の工学・理工学に関する講義を履修することで、幅広い学習が可能です。
学生Interview
大学院で養われる論理的思考は、社会でも必要な能力
川村 健二さん
私が学部時代に研究していたテーマは「岩手大学理工学部物理・材料理工学科を対象とした時間割作成モデル」でした。まずは岩手大学理工学部物理・材料理工学科の時間割の現状と問題点を洗い出すことからスタートしました。岩手大学のキャンパスは理工系と文学・農学系で距離がやや離れているので、そのキャンパス間の移動距離を最小化するような時間割を作成するモデルを提案しました。はじめに、キャンパス間の移動距離を考慮しない時間割作成モデルをつくり、その後、そのモデルにキャンパス間の移動距離を導入して移動距離を考慮した時間割作成モデルを作成・提案するという内容です。
大学院では「何か新しいことに挑戦したい」という思いがあり、さまざま検討した中で現在はTwitterの情報拡散の仕方について研究しています。Twitter において、「ツイートの内容によって拡散のされ方が違うのではないか」という仮説を基に、大きく拡散されたツイートのリツイート数の時系列変化と、ユーザー情報を用いたネットワーク構造の分析を行っています。まだ研究途中ではありますが、ツイート内容により特有の情報伝播のパターンがあることがわかってきました。ツイートの収集やユーザー情報の取得は TwitterAPI を使用しましたが、プログラムを組み、どのようなツイートが広がるかなどを見ているのはとても楽しいです。先行研究があまりないので、行き詰ることも多いですが、逆に問題をしっかりと設定できれば良い研究ができるので、やりがいを持って研究しています。
私の場合、学部に入学した時点で大学院進学は決めていました。岩手大学の大学院(工学専攻)のOBでもある父が「理系の道に進むなら院に進学するのが大前提」という考えであった影響もありますが、実際に大学院での生活を体験してみると、時間に融通が利くことにより参加したいインターンシップに日程さえ合えば参加でき、学部生では体験しえなかった業務なども行えました。論理的思考も養われますし、理系分野で活躍する人材になりたい人に対してはぜひ大学院に進学することをおすすめしたいです。私自身は進学の選択は正解だったと胸を張って言えます。
※取材は2022年12月段階のものです
このコースではこんな教員が待っています
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石垣 剛
ISHIGAKI Tsuyoshi面分光装置の開発に基づく銀河活動の観測的研究
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瓜生 誠司
URYU Seiji半導体・カーボンナノ材料の電子物性理論
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川崎 秀二
KAWASAKI Shuji揺らぎ現象と非平衡系、安定分布、大規模複雑ネットワーク
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中西 良樹
NAKANISHI Yoshiki極低温、強磁場での強相関係物質の磁性
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中山 敦子
NAKAYAMA Atsuko高圧力を用いた物質の高密度化と新奇物性の研究
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成田 晋也
NARITA Shinya素粒子物理学の実験的研究
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細川 律也
HOSOKAWA Ritsuya超大型液体ヘリウムTPCの研究開発
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本田 卓
HONDA Takashi -
松川 倫明
MATSUKAWA Michiaki新規電子材料の物性評価と超伝導物質の開拓
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馬渡 健太郎
MAWATARI Kentarou素粒子標準理論を超える新物理の探究
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宮島 信也
MIYAJIMA Shinya精度保証付き数値計算
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脇舎 和平
WAKIYA Kazuhei新奇な量子現象や機能性を示す希土類化合物の合成